文学少女のラノベ感想文【千歳くんはラムネ瓶のなか2 】

f:id:chiikama_chan:20210719123259p:plain

 

こんにちは、匙です。

先日『千歳くんはラムネ瓶のなか』というライトノベルの紹介文を書きました。

 

その際、ガガガ文庫の編集様より、Twitterにて嬉しい反応をいただきました。ありがとうございました。

 

今回は、同シリーズの2作品目について触れます。話題のラノベを読んでみたい、気になるラノベを探している、ラノベってどんな感じなの?という人の参考になれば幸いです。

 

▶︎ 過去記事はこちらよりご覧ください

chiikama-chan.hatenablog.com

 

 

千歳くんはラムネ瓶のなかについて 

 

こちらの作品は「このライトノベルがすごい!2021」にて、文庫部門1位を獲得しています。既存のラノベ作品に比べると、異質なテーマ設定だそう。

 

独断と偏見によりますと、ラノベ通称オタクが読む作品なので、読者はいわゆる非リア属性が多い傾向にあります。

 

ところが『千歳くんはラムネ瓶のなか』はなんと、リア充が主人公。いや、登場人物、全員がリア充というから驚き!しかもリア充の中でもトップオブリア充!キングオブリア充!クイーンオブリア充だらけなのです!!!!!(全オタクがここで死亡)

 

普段は「リア充◯ね」とか「リア充爆発しろ」とか言っている非リアのキモオタの皆さんが、チクリチクリと心の柔らかいところを刺され、出血多量とともにラストを迎えるキラキラしゅわしゅわ青春学園ストーリーです。

 

著者:裕夢さんについて

作者は裕夢(ひろむ)さんという方で、前作『千歳くんはラムネ瓶のなか』あとがきによりますと、本作がデビュー作とのこと。

 

もともと純文学や一般文芸を愛読していた裕夢さんは、知人の勧めによりどっぷりとラノベ沼にハマってしまったそうです。ラノベ、恐ろしいですね。

 

出身は福井県とのことで、作中に何度も福井弁が登場します。日本語訳も書いてあるので、何言っているのかわかんなくても大丈夫です。

 

 

『千歳くんはラムネ瓶のなか2』あらすじ

誰もが羨む、完璧スーパーリア充高校生の千歳 朔(ちとせ さく)。彼の周りには、同じくトップカーストに属する外見・中身ともに優れた、美男美女の友人がいつも集まっている。

 

そんな千歳 朔に、誰とも付き合うことのない、高嶺の花的存在である超絶美少女・七瀬 悠月(ななせ ゆづき)があるお願いをする。それは —―—

 

「千歳しかいないの。どうかお願いします。私と付き合ってください」

七瀬悠月から恋人になってほしいという提案を、ある条件付きで受け入れる千歳朔。ところが悠月の意図は別のところにあり…。

誰もが羨む美男美女カップルが始めた、偽りの恋。そんな二人に、陰からカメラのレンズが忍び寄る。

 

悠月の本当の思いとは、いったい?二人を追い詰める影の正体は?

 

 

おすすめポイント

『千歳くんはラムネ瓶のなか』で、特に読んでほしいポイントをご紹介します。

うつくしい描写

ラノベってオタク向けの小説でしょ?なんて、甘く見てはいけません!読みやすい柔らかな表現だからこそ「ああ、わかる」と唸ってしまう言葉が羅列しています。

 

昔から図書室や図書館が好きだった。

古びた本の香り、めくるページのリズム、司書の人がブックトラックを押すきぃきぃという鳴き声。そういうひとつひとつが、ちょっとずつ秒針の進みを遅くしているような気がする。

 

なんて素敵な表現なんでしょう。

図書館に行くと、時間の感覚がゆったりしているような気がするんですよね。「そういうひとつひとつが、ちょっとずつ秒針の進みを遅くしている」、図書館を流れる時間感覚にぴったりな表現です。

 

魅力的なキャラクター!

ラノベで最も大切なのはキャラクターなんじゃないかと、私は思っています。

 

キャラの個性が立っていて、一人残らず魅力的。そういった要素がラノベには不可欠なのかな、と。『千歳くんはラムネ瓶のなか』には、個性豊かなキャラがたくさん登場します。

 

もちろん、カーストトップに君臨するようなリア充キラキラタイプもいれば、しれっと紛れている存在感わりと薄め女子、オタクからイメチェンしたタイプ、ヤンキーで喧嘩っ早いタイプ、ねちねちストーカータイプなど、とにかく個性的!

 

私の推しは、前作で大活躍した元引きこもりオタク・健太くんです。今作でもいい味を出しています。かわいいね、健太くん。

 

 

 

気になるポイント

面白い作品なのですが、別の意味でも面白い部分があったのでご紹介します。

常軌を逸した高校生の日常

前回の作品もそうでしたが、慣れるまではちょっと好き嫌いの分かれる主人公です。

 

冒頭の千歳朔と七瀬悠月の会話、高尚というかなんというか、普通の高校生ってこんなこと言うっけ?と気になってしまいました。(言うのかもしれません)

 

普段、私が塾で教えている高校生とは、文学の話で盛り上がったことなど一度もないですから、そのギャップに慣れませんでした。まあいるのかもしれませんが、お互い腹の探り合いをするために、オペラ座の怪人を例に出す高校生も。

  

あと個人的に、一人暮らししている男子高校生が、鉄のフライパンで油ならしを怠ることなく中華料理をしている描写、メッタ刺しにされました。そんな男子高校生ヤダァ。

 

俺はいいけど、YAZAWAがなんて言うかな

国民的スターYAZAWAこと、矢沢永吉が何度も出てきます。

 

「俺はそれでいいかもしれない。だけど千歳朔だったら?」「私はそんな女の子じゃない、七瀬悠月だ」みたく、YAZAWAのオンパレードです。ちょっと面白いです。私はツボに入ったので、彼らが本名語りを始めたら「YAZAWA入ったな」なんて楽しんでいます。好きです。

 

 

こんな人におすすめ

ラノベ最近流行っているみたいだし、読んでみようかな」「異世界ものとか転生とか飽きたし、違うの読みたいな」「一般教養としてラノベ、読んでおきたいな」という人におすすめです。

 

前作に引き続き、可愛らしいraemzさんのイラストもおすすめです。

 

 

読みやすい文体、丁寧な表現でサクサクっと読めます 

非リアの皆さんはぜひ、自身の学生生活を思い出し、苦い思いを噛み締めながら読んでみてください!